シャープペンが出てきたよ

にゃんた へ

にゃんたが虹の橋を渡って、もう一年が経ちました。
去年メールをもらって、すぐに電話して、今年の鮎は間に合わなかったねって、そういったら涙がこぼれて。
帰省でおうちに戻って、にゃんたのお墓に手を合わせても、なんだか実感がわきませんでした。なんだか、すぐそこの草むらからにゃーん、て声を上げてひょっこり現れないかと。バーベキューで鮎を焼けば、早くしろと父の背中に声を掛ける姿があるんじゃないかと、思わず探してしまいました。

なんだか実感がわかないのは、私が離れて暮らしてしまっていたからだよね。ごめんね。
初めて就職で東京に出た時、実家の片付けられた私の布団の上で丸まって寝ているにゃんたの写真を見た時、仕事を辞めて帰ってやろうかと思ったのは本気でした。ずっとずっと一緒だったもんね。忘れもしない中学生の三年生の冬。冬休みだけという約束をあっさり覆して、私の部屋で育った君。最初はほかの家族になかなか懐かず、私の膝の上でごろごろと喉を鳴らす君。受験勉強の徹夜の夜も、そこから死んだように眠るときも、高校生になって部活でヘロヘロになって帰ってきたときも、居間で食事をとるときなんか、私のごはんの3分の1をあげたこともあったっけ。どんな時も君と一緒でした。

そうだ、この前大掃除をしていたら、シャープペンが出てきたよ。受験勉強の時、にゃんたが邪魔してガシガシに噛みついたり、爪痕を残してくれたあのシャープペン。それで受験を受けて合格したから、ずっとお守りがわりに使っていたシャープペン。いつの間にか見当たらなくなっていたのに、虹の橋を渡ったとたんに出てきたんだ。きっと忘れないでって、見つかるところに出してきたんでしょう?

どんな風に時間が経っても、忘れないよ。
だって君は私にできた初めての息子だったからね。

虹の橋の向こうで、他の子たちと仲良くね。
猫見知りだから少し心配ですが、にゃんたよりも若く先に逝ってしまったまめ太郎ともろみのこと、よろしく。

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