あの時君の思いを受け止めなくてごめん

私が子供の頃の話です。
我が家にはいつも犬がいました。
自分が生まれる前から、我が家には犬がいることが当たり前でした。
そして、犬は「番犬」と思っていました。
私がその犬と出会ったのは、スーパーの一角にあった「もらってください」というメッセージでした。
犬が欲しかったので、親にお願いし、学校の帰りに連れてきました。
その犬は雑種で、名前は「ひこ」と付けました。
オスで、目のくりっとした白と黒のぶち。
小さいうちは家の中で飼い、一緒に生活してたのですが、大きくなると体もしっかり大きく、家の外で飼いことになりました。
その頃の私は、ただ「可愛がる」しか知りませんでした。
悪いことをしたら「怒る」だけ。
良いことをしたら「褒める」だけ。
上っ面しかしらなくて私が「飼い主」なんて勝手に思っていた。
でも、ある日家に帰ってきたら、ひこは様子がおかしかった。
泡を吐いて、ぐったりしてた。
病院に行ったら、「フィラリア」にかかっていた。
まだ五歳でした。
それからは定期的に病院に行き、薬を飲んでいました。
あの時のような具合が悪くなるようなことはなかったけど、やはり日に日に体調は年とともに変わっていった。
きっとひこは、寂しかったんじゃないかって思いがずっとしてた。
側にいてほしいのに
家の外に繋がれ、吠えたら怒られて。
散歩に行きたくてもひもを伸ばしてはいたけれど、なかなか思うような散歩はできなくて。
いつも一緒にいた時、私の顔を見つめていた目を思い出して。
もっと私と遊びたかったんだろうな…
具合が悪くてつらかったんだろうな…
いつも私の帰りを待っていた姿を思い出すと
なんだか胸が締め付けれられて。

君の1日はどれくらいの時間だったんだろう。

私よりも早い時間を駆け抜けた君。
ごめんね。

時間は永遠じゃなかった。

後悔でつらい。
いま、自分の子どもがあの頃の自分と同じように犬を飼いました。
毎日散歩するのも、寝床のそうじをすることも、向き合っている。
私があの時ちゃんとしなかった後悔から、子供には最後の瞬間まで「今生きてるこの子」を幸せにするように。
ただ可愛いだけじゃない。
大事だからこそ「ダメな時はだめ」
可愛いからこそしっかりと教える。
そんな思いで今、生きてる。
長生きできなかったひこちゃん。
彼の分まで、いま一緒にいるこの子を幸せにするからね。
ごめんね。
そして、ありがとう。

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