今までありがとう

当時妻の実家は義父、義母、ゴールデンレトリバーのラブの二人と一匹で暮らしていました。そんな家庭にミニチュアダックスフントのアトムはやって来ました。
妻の実家では、ペットはラブで最後にしようと決めていました。ですが、ショーケースの中で、ウルウルした目でこちらを見つめるアトムに出会い、家族に迎えることを決意しました。
アトムは義父とラブと昼寝、あと食べるのが大好きな犬でした。いつもラブの周りで『遊ぼ♪遊ぼ♪』とじゃれついては、昼寝をし、祖父の所に行っては膝に両手をかけて、『抱っこしてワン』と言っている様でした。その中でも特にアトムが大好きなのは昼寝です。いつも窓際やソファーで昼寝をし、とても幸せそうでした。
そんなある日ラブが息を引き取りました。8月8日でした。アトムはもちろん、家族全員が悲しみました。それまで大好きだった散歩にもアトムは行かなくなり、とても悲しそうでした。そんな皆が悲しんでいたある日、新しい家族が増えました。私の娘が生まれたのです。
正直最初はアトムも戸惑っており、どうしていいかわからない様子でした。ただ、娘が私達の大切な存在である事はわかっていたみたいです。いつも自分の妹の様に娘の事を少し離れた所から見守り、娘がイジワルされたり、からかわれたりすると、『やめろ!』と言いたげに吠えるのです。普段おとなしいアトムがいきなり吠えるので、皆んな驚きつつも、嬉しそうにしていました。
こうして家族にも又幸せな日々が訪れ、月日はたち、娘は大きくなり、アトムはおじいさんになって行きました。娘は毎週妻の実家に行っては『じいちゃん♪じいちゃん♪』とアトムと一緒に義父に甘えていました。アトムの年齢が少し気になっていましたが、まだ11歳ですし、あと2〜3年は生きてくれるだろうと思っていました。
そんな夏の日、『今日はラブの亡くなった日だね』と話していたら、突然アトムが『ワン!』と壁に掛かっていたラブの写真に向かって吠えました。
突然どうしたのかと見ていると、アトムはそこから少し歩いたあと倒れて動かなくなってしまいました。
慌てて病院に連れて行くも、それからアトムが目を覚ます事はありませんでした。ラブの命日と同じく8月8日アトムは息を引き取りました。
2日後に火葬を行いました。義父は最後に『今までありがとな…』と言いアトムは空へと旅立って行きました。
アトムがいなくなった義父の家は、とても静かな所になってしまいましたが、毎週末新たに家族に向かい入れたミニチュアダックスフント二匹を連れて行っています。義父の家は広いので、二匹とも大喜びで遊んでいます。
義父も『アトムに比べて軽いなぁ』と喜んで抱っこしていました。今アトムはラブと一緒に家の庭に埋めています。きっと天国でラブと遊びながらも、私達の事を見守っていると私は信じています。

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