沢山の喜びと辛い別れ

ミニチュアダックスフンドの彼と出会ったのは16年前。三人兄弟の真ん中でまだ目も開いていない時にブリーダーさんのお宅に伺い、一目で気に入った子だった。臆病者で初めての人を警戒する一方、三回位同じ人に餌付けをしてもらうと凄く懐く性格がゲンキンで好きだった。短い手足がなんとも可愛く、いつも一緒に寝起きをともにしていた。私が目の手術をした時、偶然にも彼も目を負傷したりと何かとシンクロ率の高い子だった。ペットと言うよりは、家族の一員だった。大きな病気をすることもなく、ずっと童顔なままとても元気だった。毎日彼と夜風の中、川縁をお散歩するのが日課だった。一緒にハイキングや小さな山にも登った。獣医さんには、「見事な脚力がある子だねー」と褒められた。
そんな彼も、少しづつ歳を重ね、光沢のある茶色い毛が少しづつ白髪が混じり始めた。どんぐり眼の黒目も少しづつ白くなってきた。それでも相変わらず元気で日課の散歩に行きたがる子だった。
15歳になった頃、トイレを失敗することが増えて、目もほとんど見えていない様だった。垂れ耳もほとんど聞こえていないのか、呼び掛けても反応が薄くなった。1日の中で眠っていることが増えた。日課の散歩もままならないほど、自慢の脚力も衰えていた。小さな段差や小石でつまづくこともしょっちゅうだった。ほとんど目が見えていなかったのだと思う。札幌で大きな地震があったあの日に、急に癲癇を起こした。目がクルクル回り、急にバタンと倒れた。足が短かったので、頭を強打することもなかったが、私は、本当にビックリした。パニックになりそうだったが、舌を噛んだらいけないと思い、懸命にストローに水を含ませて口を開けた。幸運な事に癲癇の症状は数分で治まり、舌も噛んでいなかった。しかしこの日を境に徘徊行動が始まり、またいつ癲癇が起きたらと思うと寝ても覚めても心配だった。獣医さんには癲癇用の薬を処方してもらったが、効果があったのかはよくわからなかった。それから数ヶ月後、ついに自力で立ち上がる事も食べる事もできなくなった次の日に眠る様に安らかに亡くなった。介護をしなくちゃいけないなぁと思う暇もなく、逝ってしまった。本当に素晴らしい子だった。私が落ち込んでると近寄ってきて寄り添い、私が爆笑してると目をキラキラさせて嬉しそうに近寄ってきた。そんな彼と、もっと長い時間を過ごしたかったが、小型犬で16歳まで生きれたのは、幸せな人生だったと思う。彼から学んだ優しさ、癒しの気持ちを忘れずに私はこれからも生きて行きたいと思う。

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