現実味のない死
会社KのF部長が亡くなった。
その日の夜、人伝で知りました。
事故の内容も映像も見るほど痛々しく、最初は全く現実味を感じませんでした。
これは、そんなF部長と私の思い出を記載したものです。
まず、私はF部長の下で一緒に働いてました。
あの方は私の上司で、現場管理にとても情熱を注いでいる人です。
お客様のためなら土日休みすら返上し、残業なんて自分から徹夜するくらい熱心で。
会議資料も社内行事企画も、その上お客様の仕事もこなす個人プレイヤー。
さらに部下や同僚への気遣いも多く、社内からも協力者からもお客様からも信頼されてました。
何なら、半年で辞めていった同期すら気にかけてました。
一番最初の記憶は、ペーパーな私の運転指導です。
仮採用から2週間ほどご指導いただき、ほとんどが現場までの運転でした。
私が車線間違えて会社に戻れなかった時も、少し不機嫌に「お前また間違えたな」って笑って注意されましたね。
他にも表示通りの速度だと「もっと出せ」。
仕事を見せると「おま、ここさっき指示したべ?」
自分で何でもやるから、指導するのにイライラする人…でした。
だから結構無口でタバコ吸って、何考えてるかわかんなくて。
正直最初は「怖い人」と避けてました。
それでも唯一、新人を気にして、心配して、育てたいと言ったのがF部長でした。
一つの仕事で挫折してしまい、落ち込んで体壊したんですけど。
その時に、声をかけてくださったのがF部長でした。
総務の人曰く「仕事を学ぶ姿勢があるなら、俺の部署で一から教え込むぞ?」と伝えていたそうです。
影からでも気遣ってくれたのが、何よりも嬉しかったです。
飲みの席では、日本酒を嗜みながら
「俺の奥さんと一緒に話してみないか?仕事の中で知り合ったし、女性同士の方が話しやすいだろ?」
と言ってくださったのを、さっき思い出しました。
もちろん、部署がF部長の下に変わってから、以前と全く違う進め方で戸惑いもありました。
会議資料の修正も、印刷すら本人がやってしまうから「新人の私の仕事取られた!」と何度悔やんだことか…。
一番苦悩したのは「空き店舗の物件調査」です。
時間が空いたら「ココ、新しい物件できるから空き情報見てきて」「今度こんな店が入るんだけど、どんな工事か調べて」など言われるがまま歩いてました。
よく道を間違えたり、全く違う場所に行ってはメールやり取りから電話に切り替え「いやそこじゃなくてだな…!」と叱られてました笑。
あとは、新店舗を考えるお客様へプレゼンする空き店舗を調べて、それを資料にまとめたり。
ある日、初めて部署内の会議で配った時がありまして。
全ての空き物件を資料にまとめて、部署全員に渡すと、
「要するに、これは情報という名の『武器』になるわけだ。空き物件や条件がわかれば、それをお客様に伝え仕事の機会を作れるだろ?」
「このまま、どんどん更新してけ。」
一部署だけでも、初めて認めてもらえた気がしました。
F部長は、『自信を付けるきっかけ』を作るのがうまい方だと今は思います。
他にも、お店の看板を一緒に考えてはデータにお越し、最終的に私とF部長が考えたデザインが採用されました。
サブタイトルとかも、フォントから調節まで一緒に進めたから一番思い出深いです。
現場管理なんて会社で右に出る人がいないほど素晴らしい方で
「コーキング作業は見習っとけよ?あの人以上にうまいやつを俺はみたことない。」
と、協力者でも経歴長い職人さんが言ってました。
他にも、お客様の電話一つで粗方の対応策をまとめ、簡単なメンテナンスなら自分でやってしまうほど。
だからこその人脈が沢山あって、新規もお得意もたくさん抱えてたと思います。
ここまでたくさん書いてきましたが。
F部長は「すごく他人思いの優しい人」なんです。
Fさんの技術を学ぶ真剣な部下もいます。
Fさんを慕う上司もいます。
Fさんが涙流しながら心配する新人もいて、
(お酒の席だったから、次の日には本人忘れてましたw)
Fさんを信頼する人が、たくさんいた。
最後のエピソードですが、
私は最近、会社を辞めました。
自分の心がまとまらず、後ろめたさが強くて。
それを真っ先に相談したのがFさんで、
「いつ辞めんだ?…わかった。俺から伝えとく」
それだけでした。
他の企業さんからよく質問されるのですが、
「新人が辞めるってなった時、止められなかった?」
「全く。キッパリと辞めました!」
「え??」
こんな面接ばっかでした笑
今思うとFさんの根回しや気遣いがあってこそ、スッキリした退社だったんですね。
本当、何から何までありがとうございます。
退社が決まって、最後の運転の車内でFさんが一言。
「就職先決まったら連絡しろよ?」
タバコ吸いながらの一言。
まさか…これがあなたから言われた最後の仕事だとは、夢にも思わなかった。
後回しにして伝えられないまま終わってしまって…。
本当に、ごめんなさい…。
ここまでが私とFさんとの思い出です。