また逢おうね。
貴方との出会いは私が16歳の秋でしたね。
いつもと違う景色を見たくて散歩をしていた私。
きっと、貴方も私と同じ気持ちで歩いていたんだよね。
すぐに意気投合して、あっという間に仲良くなった気がする。
遊ぶ時はいつも貴方の親友と3人…
夜遅くまでお喋りしたり、学校のプールに忍び込んで
泳いだ時は誰かに見つかって怒られるんじゃないかとドキドキした。
付き合って1年くらい経ったある日
私は貴方の親友にこっそりと打ち明けられたの。
貴方が血友病だと…
一緒に遊ぶのは楽しいけど、あまり激しい事はできないんだ!って。
彼方より1歳年上の私は進路を考える時期で
家庭環境に不満のあった私は地元を離れる事を
子供の頃から決めていた。
まさか、そんな時期にすごく好きになる人に出会うなんて
思ってもいなかったから本当に悩んだけど
相談したら気持ちがブレる。
彼方の病気の事を知らないフリして
私の気持ちも伝えないまま一方的に別れを告げた。
彼方の事は本当に大好きだったけど
病気の彼方に寄り添う自信がなかった。怖かった。
もし、急に居なくなったら…と想像するのも嫌だった。
彼方から離れれば、そんな恐怖を味わう事もないと思った。
当時の私は彼との恋愛よりも未来の自分を選んだの。
彼方と離れてからも、彼方の事を時々思い出してた。
だって、大好きなのに別れたんだから…
それから
8年後、同窓会で地元に帰った時に友人から
「たまに街で彼に会うんだけど、彼が私の事を気にしてたよ」
と聞かされた。
連絡先もわからなかったから、その友人に
「今度会ったら私の連絡先を彼に伝えて!」
と伝言した。
暫くして彼から連絡があった時は本当に嬉しかった。
再開した瞬間から心が通った様な気がした。
それから暫く連絡を取り合い、地元に帰るのが待ち遠しくて
たまらなくなった。
26年前の夏、
少し早めのお盆休みを取って
地元で会う事をお互いとても楽しみしてた。
お盆休みの10日前の朝、
勤務先に彼のお兄さんから電話があった。
彼はお兄さんととても仲が良く
今思えば、幼い頃から彼を守っていたんだなぁと。
そんなお兄さんなので、お付き合いをしていた学生の時も
よく遊びに連れて行ってくれた。
でも、なんでお兄さんが電話してきたんだろう?
実は、8年後に再開してからはお兄さんとは会っていなかったので
連絡をもらった私は弾む声で「えー!元気〜?」と。
お兄さんは静かな声で
「弟が亡くなった。今夜お通夜だけど、もし来れるなら来て欲しい」
とだけ言って電話を切った。
何を言われたのか理解できず、信じることなんて出来なかった。
とにかく、確認しよう!
そんな気持ちでお通夜に向かった。
お通夜には物凄く大勢の人が集まっていて彼の人柄が伺えた。
8年も地元を離れ、連絡など取っていなかった私には
知り合いも居らず、何よりも祭壇に近づく事が怖かった。
集まった人達が次々にお焼香するのを
ただただ見つめていた。
その時、一人の男性が声をかけてきた。
彼の親友だった。
私を覚えていてくれたのだ。
親友Yに案内されて祭壇の前に…
その時、ようやく私の中で彼の死が本物となった。
親友のYだって、辛くて悲しいはずなのに
彼の親族の様にお通夜のお手伝いをし
毅然とした態度で私を手厚く対応してくれた。
翌日、火葬の間に彼の死因について話してくれた。
彼と一緒に湖に遊びに行った先での事故で
ジェットスキーでの正面衝突だったと。
相手の方も怪我はしたが、命に別状はなかった。
でも、彼は…
出血したら止まりにくい持病の持ち主だった彼は
手当される事もなく…だったと。
数日後、親友Yが彼と過ごした最後の場所へ案内してくれた。
当時の状況、様子、彼との思い出などいろんな話をしてくれた。
自宅に戻って来てからは、ポッカリ穴が開いてしまった様に
何もする気になれず、喜怒哀楽の哀しかない状態が続き
仕事へ行く気力もなくなり会社を辞めてしまった。
何を見ても、何をしても涙が出て来て止まらない日々
いつもの自分に戻ったのは3年後くらい…
彼が居なくなってから、暫くは地元に帰る機会が時々あって
帰る度にお墓に行った。
お墓に行くと彼に会える様な気がしたから。
毎日寝る前に彼を想ってお祈りもしていた。
彼が一人ぼっちで寂しくない様に…と。
寝る前のお祈りはもちろん今でも続いている。
誰にも、どうする事も出来ない事ってあるんですね、
時間だけが解決してくれた。
長い長い時間をかけて…
私の人生の内のたった2年ちょっとしか関わらなかった彼、
たった2年ちょっとで私の心のかなりの部分を支配している。
今でも哀しいし、寂しいし、逢いたい!
時々、ふと彼が側にいる様な感覚になる時がある。
とっても不思議な感覚だ。
彼について、こうして書いている間も思い出して泣いてしまい
何度も中断してしまう。
彼が亡くなってから私は素直に気持ちを伝える様になった。
人はいつ死ぬかわからない、後悔のない人生に!と
彼が教えてくれている様な気がするから…
Katsu ありがとう。
また、逢おうね!
好奇心旺盛で賑やかと孤独を好むアラフィフです。