私の初めての愛犬くりぃむへ

 くりぃむと私が初めて出会ったのは、私が小学生の時でしたね。犬が大好きで、ずっと飼いたいと思っていた私は、誕生日が来るたびにお父さんにお願いしていたものです。クリスマスの近いある日の朝、お父さんが急に、「犬見に行くぞ。」と言いました。はじめなんのことか分からず、ポカンとしていると、「子犬もらいにいくよ。」と言われて、やっと分かりました。嬉しすぎて飛び起きたのを覚えています。
 会いに行くとそこには可愛らしい子犬が5匹いて、みんなケージの端の方で恥ずかしそうにしていました。飼い主の方が、「どうぞ好きな子を選んでね。」と言いましたが、みんな可愛くてどう選んだらいいのか分かりません。そこで私は、「おいでー。」と呼んでみました。すると、1匹だけ私の方に寄ってきたのです。ペロペロと私の手を舐めて、しっぽを振っていました。「この子に決めた!」とすぐに抱き上げました。これが、私とあなたの出会いでした。
 お父さんから、「責任もってちゃんと育てるんだよ。」と言われて、ペットを飼うということは大変なことなんだな、と思ったのを覚えています。その時は、何が大変かは分かっていませんでした。
 あなたが家にやってきて、毎日がとても楽しく、早く起きて遊び、小学校からもすぐに帰ってきて、たくさん遊びました。餌をあげたり、散歩をしたり、お世話も自分なりにしていたつもりでした。しかし、しつけというものはまだできてないため、おしっこやうんちを廊下の真ん中でしてしまったり、食糞をしてしまったり、床や壁をガリガリと噛んだり、あなたの行動に困惑したのも事実で、小学生の私には難しい問題でした。遊んであげるだけじゃ、ダメなんだな、と感じたのを覚えています。しつけについては、お母さんに任せてしまいました。
 室内犬として飼っていたのに、なかなかトイレトレーニングが進まず、結局玄関にケージを置くことになってしまって、ごめんね。寂しかったよね。その時から、無駄吠えが増えたあなた。餌を食べている時は唸り、手を出すと噛みつこうとしましたね。お風呂も大嫌いで、シャワーをかけた途端に暴れていましたね。そういった行動を見ていて、だんだんくりぃむから離れていった私は、中学生になり、高校生になり、忙しくなったことを言い訳にして、お世話もほとんどしなくなりました。今思えば、無責任な行動で、あなたに寂しい思いをさせてしまっていましたね。あの時は気付けませんでした。
 あなたが妊娠、出産を経てお母さん犬になり、3匹の可愛い子犬が産まれましたね。見た目も違うし、あなたが臨んだ妊娠ではなかったため、育児放棄していました。本当にごめんね。辛かったよね。2匹は譲り、1匹だけ家に残ったあなたの子は、今ではおじいちゃん犬になったけれど、元気に私たちを癒してくれています。産んでくれてありがとう。あなたには大変な思いをさせてしまいましたね。私のことが嫌いになったかな、子犬たちに飼い主を取られたと思ってしまったのかな。会話できたらいいのに、と何度も思いました。全然、お世話してあげられなくて、ごめんね。
 謝ってばかりでは暗い内容になってしまいますね、私はあなたのおかげで、命の誕生にも立ち会えて、育てることの大切さや大変さ、ペットを飼うということの責任の重さ、もちろん癒しや愛らしいと思う感情など、さまざまなことを教えてもらいました。本当に感謝しています。ありがとう。
 私が就職を機に一人暮らしをすることになり、実家を出るとき、とても寂しそうな顔をしてくれていましたね。何もお世話できていないのに、あなたは私がでかけるときや帰宅したとき必ず出迎えてくれましたね。ありがとう。親と喧嘩したときはよく話を聞いてくれましたね。泣いていると、涙を舐めてくれたり、膝の上に乗って温めてくれましたね。優しいあなたにどれだけ癒されたことか、もっと感謝を伝えたかった。就職してから実家に帰ることも少なくなってしまい、老犬になったあなたに会えるのも年に数回となってしまいました。たまに帰るとしっぽを大きく振って待っていてくれましたね。
 19歳と長生きしたあなたの、半分も一緒にいられなかったように思いますが、私の初めての愛犬くりぃむは、一生忘れません。そしてこれからは、ペットが亡くなった時に後悔しないように、愛情を注いで、日々、感謝の気持ちをきちんと伝えていきたいと思いました。今、新しい家庭を持ち、子育てをしている私ですが、最近、犬を飼い始めました。空から見ているから知っているかな?しつけは大変だけど、可愛くて、時々くりぃむを思い出します。見守っていてくださいね。
 ありがとう、くりぃむ。大好きだよ。さようなら。

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