天国へ旅立ったチョビちゃん

チョビちゃんは私が中学3年生の2月に、飼い犬のチャチャ丸から生まれた子です。
親犬のチャチャ丸は子供を産んだ翌年に血液のガンで亡くなりました。
その深い悲しみを癒してくれたのがチョビちゃんです。
チョビちゃんは8キロほどの雑種で、特に大きな病気をすることもなくスクスク育ち、私たち家族のアイドルでした。
家に帰ると元気に迎えてくれるので、荷物を置きに行ったあと、楽しかったこと、辛かったこと、悲しかったこと、いつも沢山お話をしていました。
夏は近くの川に行って、冬は雪が積もる道を2人でザクザク走り回って、たくさんの季節を楽しく過ごしていました。
チョビちゃんも歳をとり、16歳になってから急に身体が衰え始め、散歩に行く時はいつもダッシュで飛び出していたのにその時は腰が曲がり、足もフラフラブルブル震え、一歩一歩がとても辛くなってきました。
その年の冬には自力で起き上がるのも辛く、食欲もなく、排泄も気づいたら垂れ流しになっている、そんな状態になってしまいました。昔は5分もあれば一周できる自宅の周りを30分以上かからないと戻ってこられないほどに。さらに寒さが厳しくなるにつれ、今度は後ろ足が言うことをきかなくなり、ついにはお散歩に行けなくなってしまいました。
普段、私たち家族はみな働いていたので昼間は分かりませんでしたが、夜になると必ずクーンクーンと甘えたような、でもどこか辛そうな声で泣くので私は気になってよく側に様子を見に行っていました。
クリスマスイブの日に私は出かけており、家に帰ってきたのがクリスマスに変わった頃でした。家に帰りいつものようにチョビちゃんに声を掛けて部屋に向かいました。すると、いつもよりも大きな声で鳴いています。とても寒い日でした。なんだか嫌な予感がしました。寒いのかな?それともどこか痛いのかな?と様子を見に行くと、もう頭を持ち上げることも難しく、唯一動く前足をまるで走っているかのようにバタバタと動かしながら、クーンクーンと鳴きながら目で何かを訴えているように見えました。
私は「走りたいのかな?」と思い、暗い中庭に出て後ろ足を抱えて前足を地面に付けてあげると、今まで走りたかった衝動が爆発したかのように力強く前足だけで走り始めました。私はあまりの早さに中腰で転びそうになりながらも後ろ足を抱えて一緒に走りました。すごいね、走れたね、走りたかったんだね、と声をかけ、じゃあもう一回走ろうか、と抱きかかえて向きを変えてあげた時です。両足がダランと垂れ下がり、気づいた時には私の腕の中で息絶えていました。あまりに突然のことでびっくりして言葉が出ませんでした。まだ温かい身体を抱きしめたまま、両親を呼び、ごめんね、寒かったね、今まで頑張ったね、今までありがとうね…みんな涙が止まりませんでした。
その頃、年末ということもあり仕事やプライベートが忙しく、なかなか遊んであげる時間が取れなくて、ちゃんと向き合うことができなかったことをとても後悔しました。もっと沢山歩かせてあげたかった、沢山遊びたかった、そんなことばかり考えてしまいます。
チョビちゃんが亡くなって49日のあと、夢を見ました。まだ元気だった頃の、走り回っていた頃のチョビちゃんが、私の方を見てワンと一声鳴いて、クルクルと走る姿を見せてくるのです。そしてそのまま光の向こうへと行ってしまいました。最後に走らせてくれてありがとうなのか、死んでまた自由に走れるようになったよ、と報告に来てくれたのか分かりませんが、すごく幸せそうな顔で夢に出てきてくれたので、私のことを恨んでなかったんだなと少しホッとしたのを覚えています。
それから数年後、たまたま知り合いの所で生まれたワンちゃんが、チョビちゃんの命日に産まれた子だと知り、また飼うことになりました。チョビちゃんの分までたくさんの幸せをそそいでいこうと思います。

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